第12回


第 1 2 回
                                        須 永   慶


【  カ   ツ   ラ  】


 先日、

といっても既に数カ月経過していますが、NHKの時代劇「お登勢」に出演致しました。
時代劇に付き物なのは、〈ちょんまげ〉です。

ですから
殆どの俳優さんは時代劇出演が決定すると先ず、ヅラ合わせに行くことになります。
これが結構面倒・・・というか大変で、細かく時間が指定されていますから、
時間を守って出掛けることになります。
時には〈衣裳の着物〉も色合いとか、形とかまあ、ついでに役や時代背景の話をしながら、
ディレクターも立ち合って確認する意味で、体に合わせる事もあります。

今回の私の役は、徳島藩仕置き家老・寺沢陣内という「家老」の役なので、まあ、
それなりのキチッとした身なりでなければなりません。
カツラも結構立派な感じのものが欲しいと思って出掛けました。
 

先ず、最初に羽二重を一枚しっかり頭に付けます。

実際はカツラ担当の美術の人にやって貰うんですが、やはりコツがあって、
二人の呼吸が合わないと上手く正確に付けることが出来ません。
(この時羽二重がずれないようにべたっと髪の毛にも皮膚にもビンズケを塗るんですが、
これが難物で後でなかなか取れず、
ベンジンでゴシゴシ擦ったりして落とすのが大変なんです。)

そして羽二重を更にもう一枚、今度は実際に「おでこ」と家老である侍としての「頭」の部分の
境目が分からなくなる様に、可成り強めにキッチリシッカリ頭に巻き付けて貰います。
ここでカツラをかぶせて貰う訳ですが、

問題は、

自分にあったカツラがすんなり見つかるかどうかということです。

本当は一人一人の頭の形に合わせて新調すればいいのでしょうが、悲しいかな、
私なんかはまず、そんなことはあり得ません。

又時間的にも、恐らく制作費の上からも無理なので、有りもので賄うことが普通です。

有り物とは、他の俳優さんの使い古しのものです。

つまり過去に、スターさんやお偉い俳優さんの為に新調し、使ったカツラのことですね。
所が実は僕は結構頭が絶壁で且つ横に広がっていて格好が余り良くない、
とんでもない形なんです
(でも妖怪って訳では決してないですよ!)。

だからどこへ行っても合う物が少ないって言うのは知っているわけです
・・・「ズラ合わせは何時も気が重い!・・・」。

さてやおら、担当の人は一度軽く当たりを付けてかぶせてくれるんですが、
殆どの場合、合いません。
「えっ、こんなに大きかったかなあ、こいつの頭・・・」と思うかどうかは分かりませんが・・・。
私の方は何時の場合も鏡を見たまま澄まして
「・・・・」。

兎に角棚の上からあれこれ選んで持って来てくれるんですが、制作会社にも因りますが
何と五~六回は、時には7~8回は頭に当てることもあります。

私の場合、昔でしたら、萬屋錦之介さんの頭がほぼ近かったと思います。

こうしてやっとズラ合わせが終わる訳ですが、一つ注意しなければいけないことがあります。
それは絶対に無理をして「はい、ぴったりです」と言わないこと
・・・少しでも痛かったら我慢をせずキチンと
「ここがきついです」
といったことをハッキリ言うことです。

実際ある女優さんが、我慢をして「これぐらいなら充分我慢できる、出番も短いし・・・」
ということで本番に臨んだところ、一時間もしない内にバタッと倒れてしまいました。
頭を締め付けるというのは結構きつい事なんですね。
ホント、注意が必要です。

これでいよいよ本番に私も臨んだわけですが、
何回も試みた御陰でカツラの方はとても上手い具合に行きました。

完璧に近かった!

しかし思いもよらぬ事態にぶつかったんです。
そう、時代劇には正座がつきもの・・・・足が、足が痺れてしまったんですよ。
その痛いの何の・・・日頃訓練していないと飛んでもない所で恥をかくわけです。
で、何気なく周りを見回したら、
皆さん足が痺れてきた様で、顔をしかめながら両手を前につき、
足を持ち上げているではないですか。

四人共全く同じ格好でしたので、笑って良いのか、ホッとして良いのか、

兎に角現場は今日もこうして収録が進んでいるのであります。

            「ほうむタウン」掲載日2001.6.25