第 1 5 回

【 衣 裳 合 わ せ 】

                                 須 永  慶


ドラマの撮影に入る前には必ずと言って良いほど「衣裳合わせ」があります。

これについては以前「ズラ合わせ」か何かの折にちょこっと触れたと思いますが、

もう少し詳しく書かせて下さいな。



一応台本を読めば、

俳優たるもの自分の役に対しての具体的なイメージが湧いてきて、

「こんな衣裳を着たい」

とか

「このシーンは自前でいきたいなあ・・・」

といった希望のようなものを持ちますね。


このことはもう具体的に俳優としてその役作りの大きな一歩を

具体的に踏み出していることを意味 しています。


現代劇の場合、

役が比較的俳優の柄にあったものが、

特にテレビの場合本人の雰囲気や持ち味を生かした役が来ることが多いので、

自分が似合うと思うものや好きな色が画面を通しても

しっくりとすることが多い様です。

ですから最後に二つのタイプが残ってしまいどちらでも良い・・

というような時は、俳優の決定に委ねることが多々あります。

勿論全体を通して監督の意見が尊重されるのは当然ですが、

その俳優さんと話し合いながら、

一点一点、

芝居と絡めながら決めていきます。



しかし自分の意見が通らない部分があるんですね。

それは色です。


主役の人や相手役の人が使っている色などは避けなければいけませんし、

芝居や撮影現場の状況状態を常に念頭に置きながら、

屋外なのか屋内なのか、

バックの壁の色によっても色柄は変わっていきます。

とてもデリケートな一面も持っているんですね

「衣裳合わせ」は。



僕自身は今までの体験を通して色々な意味で、

「衣裳合わせ」は他の俳優さん特に相手役として絡む俳優さんより

早く決めちゃった方が有利だと思うんですが

他の俳優さん達はどうなんでしょうかねェ・・・・。

この「衣裳合わせ」には通常、全てのスタッフが揃うのが普通です、

衣裳さんだけではないんですね。


ですから

「衣裳合わせ」を通して関係者全員がそのやりとりを見聞きすることによって

ドラマや役についての確認や再確認をすることになるんです、

こうい意味で「衣裳合わせ」はとても重要な作業だと言えます。



 それから女優さんなどは

結婚して子供を産んで時間をおいてから現場に復帰することが良くありますが、

体型が恐ろしく変わってしまう場合があります。


勿論男優のそれも中年ぐらいになりますと

数ヶ月単位で腹が出てきたり

髪の毛が薄くなったり

白いものが混ざっていたり

病み上がりで痩せていたりとか致しますから、

今現在の俳優さんの状態が「適役」かどうか確認の意味でも、

直接撮影所等に来て

皆さんと顔を合わせながら衣裳を身体に当てることは

どうしても必要且つ重要になってくる訳です。



この時実は、

衣裳に合わせて指輪とか時計、眼鏡といった

小道具とか履き物も決めていきます。

役作りの上でもとても具体的に物事が決まっていくんです。



 ある番組で、そのシーンは、

クラブで飲んでから女の子と一緒に帰ってきて

外出着からパジャマに着替えるかガウンを羽織ってから、女を襲う・・・

というような衝撃的な?シーンだったんですが、

パジャマやガウンまで着替えるのは

時間的な尺から言ってもちょっと無理じゃないかと思ったもんですから

「パンツ一丁で出てきた方が面白いんじゃないですか・・・?」

と提案したところそれが通って、

当日は破廉恥にも

パンツ一丁(勿論長めのトランクス)で襲ったことがあります。



僕は今でもこれは良かったと思っているんですが

大抵の俳優さんはこういう経験の一つや二つは持っているんじゃないでしょうか。

え?

襲ったり襲われたりすることですって??



違いますよ、意見を言うことです!。